Long-term Metabolic Morbidity and Steatohepatosis Following Standard Pancreatic Resections and Parenchyma-sparing, Local Extirpations for Benign Tumor
A Systematic Review and Meta-analysis
Hans G. Beger, MD
University of Ulm, Ulm, Germany; yInstitute for Epidemiology and Medical Biometry, University of Ulm, Germany;
Annals of Surgery, Volume 275, Number 1, January 2022
Objective
良性および前癌病変に対する標準的膵切除および局所切除後の代謝異常および脂肪肝を評価すること。
RQの構造化
Ho: 非悪性腫瘍に対する膵切除において、術式による術後の代謝障害の発症頻度に差はない。
P:良性疾患もしくは前癌病変に対し膵切除を施行した患者
E&C: PD vs PLR vs DPPHR vs PMSR vs TEN
O:術後糖尿病の新規発症(pNODM)、術後膵外分泌不全の新規発症(pPEI)および脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD)の頻度
M:meta analysis, systematic review
Methods
・PD、pancreatic left resection(PLR)、十二指腸温存膵頭部切除術(duodenum-sparing panfreatic head resection: DPPHR)、pancreatic middle segment resection(PMSR)、および腫瘍核出術(tumor enuclation: TEN)後の代謝機能の測定データを報告する研究を、Medline、Embase、Cochraneライブラリーで検索した。
・2729人の患者データからなる40のコホート研究が対象となった。
・PubM/Medline、Embase、Cochrane Libraryを使用
・PD, PLR, TENを含む膵切除のキーワードで検索
・pPEIは、BT-PABAテスト、13Cレベルトリグリセリド呼気試験、便中キモトリプシン、便中エラスターゼおよび便中脂肪量も測定して、膵酵素の分泌が減少し、上部小腸の酵素が通常の消化に必要なレベルより活性化しない状態と定義
・NAFLDはCTで判断
Results
・良性腫瘍に対するPDは、327例中46例(14.1%)で術後糖尿病の新規発症(pNODM)と関連
・平均32ヶ月の追跡後に測定した243例中109例(44.9%)で術後の膵外分泌機能不全の新規発症と関連していた。
・メタアナリシスでは、PD後のpNODMは204人中32人(15.7%)、DPPHR後は200人中10人(5%)に認められた[P < 0.01;OR: 0.33;(95%-CI: 0.15-0.22)]。
・pPEIは、PD後の174人中77人(44.3%)、DPPHR後の104人中7人(6.7%)に認められた(P < 0.01;OR: 0.15;95%-CI: 0.07-0.32)。
・PLR後のpNODMは459人中107人(23.3%)、PMSR後には412人中23人(5.6%)に報告された(P < 0.01; OR: 0.20; (95%-CI: 0.12-0.32))。
・pPEIの新規発症は、PLR後17%、PMSR後8%に認められた(P < 0.01)。
・PPPDおよびTEN後のpNODMは、それぞれ19.7%と5.7%に観察された(P < 0.03)。
・PD/PPPD後、608人中145人(23.8%)が、平均30.4ヵ月の追跡後にNAFLDを発症していた。
・DPPHR後の脂肪肝の発症は66人中2人(3%)で、PPPD後に比べて有意に少なかった(P < 0.01)。
Conclusion
良性腫瘍に対する標準的な膵切除術は、糖尿病の新規発症、膵外分泌機能不全、および脂肪肝のリスクが高いことが示唆される。膵局所切除は、代謝異常の低減につながる。
FINERによるRQの評価
F: 膵臓の縮小手術は自分はあまりみたことなく、難易度が高いイメージです。できる施設などは限られるかと思います。
I/N: 代謝障害に注目した論文は、あまり読んだことありませんでした。
E: retrospectiveなので倫理的な問題なし
R: 良性疾患に対しては非常に重要と思う一方、前癌病変などへの適応はまだ慎重になる必要があるように思いました。
私見
ドイツからの報告です。馴染みがあまりない話で、理解するのに少し苦労しました。良性疾患に対し、縮小手術(という言い方が正しいのか分かりませんが)をすると代謝内分泌障害が少ないというのは当然理解できますが、みたことない人間からすると、術後の合併症の頻度、対象となっている術者や施設の技量も気になります。その辺は特に言及されていませんでしたので、なんとも評価し難い印象の論文でした。
MetaData
Summary author: Takuto Yoshida
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