研究のはじめにぶちあたるのが「文献検索(literature revoiew)」についてである。あらゆる研究において、さらには臨床においても文献検索(literature review)は重要なスキルである。文献検索の目的は、類似の先行研究がないかの確認(=これから行う研究の新規性を担保したい)、参考にできる先行研究の探索(研究を計画するしないにかかわらず)などと多岐にわたるだろう。研究以外でも日々の臨床疑問点を解決するために、また、学会発表、論文執筆の引用文献を調べるときにも行うだろう。 ここでふとした疑問が湧く。文献検索の仕方はいつ習ったのか? 医学部学生時代?それとも卒後臨床研修医時代、はたまた大学院博士課程? おそらく多くの場合は、自学自習による習得であったのではないだろうか。なんとなく検索データベースにキーワードをいれて検索することに慣れているかもしれない。では、推奨される検索方法はないのだろうか。その答えは、図書館司書について考えてみることからはじまる。 北米では、医学関連データベースについて専門知識をもった図書館司書(ライブラリアン)が存在する。医学領域に特化した検索スキル、データマネージメントスキルをもったいわゆるプロ集団である。PubMed, Medline, EMBase, Scopus, Web of Sienceなどなど多くの検索データベースに、それぞれ特有の検索方法が存在する。日々膨大化する情報、高度化・複雑化するデータベース、臨床に携わる医師がこれらについてひとつひとつ深く理解し、最適な検索を行うことはもはや不可能といっても言い過ぎではない。そんな中で図書館司書の役割は、文献検索のサポート、検索ワードの最適化、各種データベースの適切な使用方法、文献管理ソフトウェア(EndNote等)の使い方についての普及(レクチャー、ワークショップなど)など多岐におよぶ。さらには、systematic reviewにおいても重要な役割を果たす。とりわけ、文献検索に慣れていないものにとってはありがたい存在である。 研究ミーティングの話に戻ってみる。いざ、先行研究についての紹介をはじめると、指導医達からどのよに調べたのか? 調べ漏れがないのか? と怒涛の質問を受けたのを覚えている。この時、「文献検索」の大切さを痛感した。どのデータベースを、どのキーワード(MeSH含む)をどのように組み合わせて調べて、関連のある先行研究を◯◯(数)みつけた。その中から気になった論文として…と発表したほうがよっかったのは今だから言えること。先行研究がないかを徹底的にチェック(新しいアイデアだと思っても、実際は類似した先行研究があることが多いから)することは、研究の新規性にもつながると身にしみて感じた瞬間でもあった。その後、McGill大学医学図書館のライブラリアンから個人レッスンを受けることになる… 日本では、文献検索について包括的に学習できる機会(自学を除く)は少なく、特殊なスキルを有した医療系図書館司書も限られているだろう。このようなスキルを持つ図書館司書育成、文献検索についての教育プログラムの開発・実施は、これからの研究、臨床、教育の発展のために不可欠だと思う。
北米では、図書館員が回診に同行して、その場で文献検索して最新のエビデンスを提供し、診療方針の判断に貢献する…といった試みもあるそう。
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